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CAR AUDIO LAB / 03

位相とは?

なぜ、同じ音を出しているのに音が消えるのか。

同じ音でも、波の位置が違えば結果は変わる

カーオーディオの調整でよく出てくる位相。少し難しく聞こえますが、考え方は意外とシンプルです。

音は空気の振動であり、山と谷を繰り返す波として考えられます。複数のスピーカーが鳴るとき、その波がどう重なるかによって、音は強くも弱くもなります。

位相とは、その波の位置関係を見るための考え方です。

01 / IN PHASE

山と山が重なると、音は強くなる

二つのスピーカーから同じ音が出ていて、波の山と山、谷と谷が近い状態で重なると、音は互いに強め合います。

イメージとしては、1 + 1が、きちんと2になる状態。複数のスピーカーが自然につながるには、こうした波の関係が重要です。

山と山、谷と谷が揃い音が強め合う二つの波形

波の位置が揃うと、二つの音は強め合います。

02 / OUT OF PHASE

山と谷が重なると、音は弱くなる

一方の波が山のとき、もう一方が谷になっていると、互いに打ち消し合う方向へ働きます。

低音が薄い、ボーカルに芯がない、音量は出ているのに密度がない、特定の帯域だけ抜けたように感じる。こうした違和感につながることがあります。

音は、足せば必ず増えるわけではありません。

山と谷が重なり音が打ち消し合う二つの波形

波の山と谷が重なると、音は弱くなる方向へ働きます。

03 / PHASE SHIFT

位相は「合っている/逆」だけではない

位相は「正相」「逆相」の二択で考えられがちですが、波のズレは連続的に存在します。

少しだけずれている状態、大きくずれている状態、周波数によって関係が変わる状態。実車では、こうした中間の状態が複雑に重なります。

単純にスピーカーのプラスとマイナスを入れ替えれば解決する、という話ではありません。

開始位置が少しずれた二つの音の波形

実際の位相差は、正相と逆相の間にも連続して存在します。

04 / IN THE CAR

車内では、なぜ位相が複雑になる?

車内にはツィーター、ミッドレンジ、ミッドバス、サブウーファーなど複数のスピーカーがあり、聴取位置までの距離も取付位置も異なります。

さらに音は、ガラス、ダッシュボード、ドア、シートにも反射します。耳へ届くのは一つのスピーカーだけの音ではなく、異なる経路とタイミングで重なった複数の音です。

四つのスピーカーから一つの聴取点へ音が届く概念図

車内では、複数のスピーカーと反射音が一つの聴取点で重なります。

タイムアライメントとの違い

タイムアライメントは、スピーカーから耳までの距離差を時間で整える考え方です。一方、位相では、その結果として音の波がどう重なっているかを見ます。

Time

音が聴取位置へ到着する時間を整えます。

Phase

到着した音の波がどう重なるかを確認します。

Crossover

各ユニットの担当帯域と境目を整えます。

Installation

取付位置や角度、反射を含めた実車条件です。

Timeを動かせば、位相関係も変わります。二つは別の考え方ですが、互いに深く関係しています。

05 / CROSSOVER

クロスオーバーと位相は切り離せない

異なるスピーカーが担当する音域の境目では、両方のユニットが同時に鳴る領域が生まれます。

ここで位相関係が良くなければ、本来つながってほしい帯域が弱くなったり、不自然に膨らんだりします。クロスオーバーは、どこで音を分けるかだけの設定ではありません。

二つのスピーカーの担当帯域が重なるクロスオーバーの概念図

担当帯域が重なる境目では、位相関係が音のつながりを左右します。

位相が整うと、どう聞こえる?

Focus

ボーカルに芯が出て、音像が安定します。

Connection

低音と中高音が自然につながります。

Density

小音量でも音楽の密度を感じやすくなります。

Imaging

左右のスピーカーの存在感が薄くなります。

目指すのは一部の音を強くすることではなく、複数のスピーカーが一つの音として聞こえる状態です。

06 / MST SYSTEM

MSTが位相を見る理由

MSTでは、位相だけを単独で「合わせる」ことを目的にはしていません。

Time / Phase / Crossover / Level / Installationが一つのシステムとして自然につながることが重要です。

まず音がぶれない土台を作り、そのうえで広がり、奥行き、音楽としての自然さを整えていきます。

位相を中心に時間、クロスオーバー、音量、取付をつなぐ概念図

位相は、音を成立させるための関係性を見るものです。

同じ音を出していても、結果は同じではない

複数のスピーカーから音が出る車内では、波が重なり合っています。強め合うこともあれば、打ち消し合うこともある。その関係を見るのが位相です。

時間、クロスオーバー、音量、取り付け状態。それらがつながって、はじめて音は一つの音楽として成立します。

よくある誤解

配線を反転すれば直る?

必ずしもそうではありません。距離、クロスオーバー、反射、取付位置など複数の要素が関係します。

位相が合えば音は良くなる?

位相は重要ですが、それだけでは完成しません。時間、音量、帯域、取り付けと一緒に整えます。

測定器だけで決める?

測定は大切な判断材料です。最後は実車内で音がどうつながるかを確認します。

正相か逆相の二択?

実際の位相差は連続的で、周波数や聴取位置によって関係も変化します。

音が「薄い」「つながらない」と感じたら。

スピーカーを交換したのに音に芯がない。低音と中高音が別々に聞こえる。音量は出ているのに音楽がまとまらない。そんな違和感も、システム全体を見直すヒントになります。

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スピーカーの役割を分けるだけではない、帯域の境目と音のつながりを次回の記事で解説します。