商談していると色々なメーカーのスピーカーがあり中々商品が決まらないことがよくあります。当社のように、様々なブランドを扱っていると目移りしてしまって中々決まらないケースが多いのです。プロ目線で言うと好きなスピーカー選んでもらえれば、取付・調整は任せてください、と言うのが本音なのですがなかなかうまくいかないものです。以前、マイカーライフの取材でスピーカー選びに関して解説したこともありますが、改めてスピーカー選びのポイントを解説してみたいと思います。
ブランド別の特徴
数多くあるスピーカーブランドの特徴をつかむ上で参考となるのが、どこの国のブランドなのか知ることです。言語や文化の違いにより好む音も違いますのでなんとなく特徴をつかむことができます。
言語や文化の違いで好む音やボリュームが違う
アメリカ系とヨーロッパ系でボリュームレンジが違います。特にアメリカ系のスピーカーのおいしい所は、私たち日本人が聞くとかなり高いボリュームになることが多いです。比較的ヨーロッパ系のスピーカーは日本人の傾向と合っていて、普段聞くボリュームでバランスが取りやすい傾向にあります。ボリュームバランスが取れていないと、中域が立ち上がる前にうるさく感じてしまい、ドンシャリ感がある音を聞くことになります。最近では、DSPで調整をすることで改善できることもありますが、スピーカーの傾向を間違えてしまうとなかなか良い音にたどり着くことができません。メーカーの傾向やエンジニアによってスピーカーユニットの音作りが変わりますので、その辺りも考慮してスピーカーを選ぶと求めている音に近づきやすいと思います。
スピーカーの素材
スピーカーを構成する部品の中で、コーン部分の素材により音の傾向が変わってきます。ドアのウーファー部分の素材は、ペーパーコーン、アルミコーン、ファイバーコーンなどがあります。ツイーター部分も、金属系や、シルクなど素材があります。スピーカーの構造を単純に考えると、磁石の力を利用してコーンを制動させているのでコーンの比重や磁気回路の組み合わせにより、正確性や効率が変わってきます。
取付する際は、素材やスペックからそのような特徴を読み取って、バッフルの素材や組み合わせるアンプなどを決めていきます。車の場合さらにドアの特性や車両の特性など加味しなければいけない部分が出てきますが、防振作業なども含めてチューニングしてきます。この辺りは、経験値やノウハウが関係してくるので、一般のショップやDIY で行う取付とは違う部分になります。当社もそうですが、多くのプロショップのメニューに取付・チューニング費用と書かれています。
パッシブとアクティブ
最近カタログを見ていると「パッシブ」、「アクティブ」という言葉が出てきます。パッシブの場合パッシブネットワークが付属していてアナログ回路でツイーターとウーファー音を分割することができます。アクティブの場合は、バッシブネットワークが付属していませんので、DSPやサウンドナビなど音を切り分けるユニットが必要です。
音が良くなると感じるポイント
純正スピーカーを社外スピーカーに交換すれば、音が変わり良くなったと錯覚してしまいます。特に高域がしっかりすることで、中域が籠もっていても、音がはっきり聞こえる、臨場感が増したと感じ取ってしまうことがほとんどです。(ここまでが、一般の取付店の仕事です。)
しかし、プロ目線ではワンランク上の視点で音を考えています。MSTの場合、特に中低域の音質で音の善し悪しを判断していることが多いです。高域の性能に対して中低域がどれだけ追従しているかと言う部分です。特に中域は、ツイーターとウーファーの音がクロスする部分ですのでしっかり出ていない場合、音が干渉して減衰してしまったり、本来出ている音がしっかり出ていなかったり音に潤いがなかったりします。
取付とバッフル
スピーカーの性能だけで無く、取付やバッフルも大きく音に影響します。最近では、市販の金属バッフルなども販売されていて、必ずしもワンオフが良いわけではありませんが、微妙なチューニングができないことが多いので、正直扱い辛いこともあります。スピーカーのフレームの素材や構造、重量などを加味してしっかりと固定できるバッフルを製作した方がスピーカーの性能を発揮できます。
バッフルに関しては、単なるスペーサーと考えてしまう人も多いのですが、実際のところしっかりとスピーカー固定する重要なパーツです。音が出るとスピーカーユニットと一緒にバッフルが共振します。スピーカーコーンが前に出た時には、スピーカーフレームは逆方向に力が加わります。常にその振動がバッフルに伝わっているので、バッフルが共振して悪さしてしまうと音に影響が出てしまします。
そのために、密度の高いバーチバッフルなどをお勧めしております。
バッフルもスピーカーの一部と考えるべし
更に深い話をすると、取付やバッフルは、スピーカーのカタログスペックに出ている最低共振周波数(f0)に関係してきます。バッフルやドア(エンクロージャー)の作りによって、取付した際の最低共振周波数が変化します。最低共振周波数はスピーカーだけで無く全ての物体に存在するものなので、カーオーディオの場合はさらにドアパネル自体にも最低共振周波数が存在します。それらを考慮して取付を行わないとスピーカーの性能を発揮することができなくなってしまいます。
デッドニング(防振作業)は必要??
次回詳しく解説しますが、適切なデッドニングを行えばスピーカーのポテンシャルを上げることができますが、素材や貼り方を考慮しないまま貼るだけでは悪影響になってしまうこともあります。車内を静かにするためのデッドニング作業と、オーディオのデッドニング作業は全く違うものと考えた方が良いと思います。オーディオのデッドニングは、上で解説した最低共振周波数が関係してきます。基本は比重を上げて最低共振周波数が下げると言うことですが、ドアパネル自体の構造が複雑なのでポイントを絞って作業をしていかないと材料を無駄にしてします。
お勧めな予算バランスの取り方
コストパフォーマンスを考えると、最初から予算の大半をスピーカーユニットにつぎ込むのがお勧めです。
3万円のスピーカーに5万円のデッドニング作業をするのであれば、8万円のスピーカーを買って、次のステップでデッドニングを考えた方がコストパフォーマンスは上がります。
スピーカユニット本体の性能を上げることはできませんが、デッドニング作業でスピーカーユニット本体の性能を引き出すことは可能です。また、デッドニング作業をする前にスピーカーとドアの相性を把握することで効率良くデッドニング作業ができます。その方が内張りの共振しやすいポイントも把握できます。
なんとなくの感覚で、デッドニング作業をするよりはポイントを絞ったデッドニング作業を行った方がより効果の高いデッドニング作業が可能です。
スピーカー交換だけでも奥の深いカーオーディオ
スピーカーのポテンシャルを発揮するには、プロショップの力が必要です。MSTではより専門的に掘り下げて、コストパフォーマンスの高いスピーカー交換をご提案しています。カーオーディオやスピーカー交換に興味を持ったお客様、お気軽にご相談ください。お客様に合った最良のプランをご提案致します。